笑って育って - 負の連鎖切るために知ってほしい里親制度

　何らかの事情で親と暮らせず、社会的に養護されている子どもの数は全国で約4万5000人と言われ、その多くは施設で暮らしています。「負の連鎖を断ち切るために、もっと育ての親が必要なことを知ってほしい」と話す日本こども支援協会代表理事の岩朝しのぶさん(44)に里親について聞きました。

家庭で当たり前のこと知らず「負の連鎖」に

　実の親と暮らせない子の多くが暮らす施設では、規則正しい生活を送ることができ、きちんとした生活習慣は付きます。ただ「家」でないため、一緒に寝たり、「今日は何を食べたい?」と個人のリクエストを聞かれるなど、自分だけを特別に見てもらえることはありません。

　そんな普通の家庭で当たり前のことを経験せず、親の愛情を知らない子が成長して大人になった時、子育てのモデルがないために、その子どもがまた施設に入るなど、負の連鎖が起こりがちです。そんな中必要とされているのが「里親」です。

　里親制度には実の親から籍を抜いて養子縁組を行う特別養子縁組里親と、一定の期間一緒に暮らす養育里親。週末や夏休みだけ家庭生活を体験する季節・週末里親があります。

子のいない生活　考えられず養育里親に

　生まれた時からの持病で妊娠が難しいと言われていた岩朝さんは、中学生の時に里親制度のことを知り「いつかは里親になる」と思っていたそうです。結婚し、医療も進歩し結婚し、医療も進歩しているため不妊治療も受けました。そんな時、里親を必要とする子がこんなにたくさんいることを知り「我が子にこだわらなくても良い。血にこだわることはナンセンス」と改めて感じたといいます。子どもが好きで、子どもがいない生活は考えられませんでした。

　養育里親として里子を受け入れ、4歳だった子は今11歳。最初は「返したくない」とも思ったそうですが、今は本人のためにも18歳か20歳で実の親に一度は迎えに来てほしいと願っています。子どもも「お母さんとママが2人いてラッキー」と話すそうで、それだけの信頼関係を築けたことは里親冥利に尽きると話します。

　ただ、これだけ養護されている子が多いのであれば、自分が里親になるだけでは問題が解決しないと、任意団体を立ち上げ、里親の啓発を始めました。

里親への支援も必要　特有の悩みに相談窓口　

　里親には特有の悩みも多くあります。里子を迎え入れ、最初はよい子にしていても、何かあった時の負のパワーは破壊的で、車にひかれに行くなどの自傷行為や窓ガラスをたた行為や窓ガラスをたたき割るなどスケールが違います。日常的に暴力を受けていた子は、暴力のない日常に慣れるまで、わざと里親をあおって暴力を振るわそうとする「試し行為」もあります。また養育里親の場合、親権がないためにどこまで責任があり関わってよいのか、実の親との関係など、通常の相談窓口では対応できないこともあります。

　そこで、岩朝さんは里親制度の啓発と同時に里親の支援も必要と感じ、相談も受け付けています。里親がギブアップしてしまうと、里親自身が自己嫌悪に陥って立ち直れなかったり、子どもも実の親に続いて里親にも捨てられたと感じ、自己肯定感が低くなります。子どものためにも里親の支援が必要です。

まだまだ里親が必要　何らかのアクションを　

　子ども食堂は近年あっという間に広がりましたが、「里親が必要なことも知ってほしい」と岩朝さん。養護されている子どもが4万5000人いるのに対し、里親家庭で暮らしている子は6234人(平成29年7月時点)で、まだまだ里親が足りていません。里親が愛情をかけて人としての土台を作り、教育を受け、自立した社会人になることができれば、負の連鎖は断ち切ることができます。

　里親になるのはいろいろな条件から難しくても、ボランティアで参加したり、寄付をするなどアクションを起こす方法はあります。虐待のニュースを見て何かできないかと痛む心があれば、何かアクションを起こしてほしいと岩朝さんは訴えます。

【MEMO】

日本こども支援協会

https://npojcsa.com/

※毎年10月4日の「里親の日」には全国一斉キャンぺーンを行い「里親制度」の啓発を行っている。