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認知症とともに歩む 認知症を支える制度・社会資源を知ろう ~家族のための奈良認知症介護教室に参加して~

 「認知症」の家族を介護するためには、知識も必要です。奈良県が「認知症の人と家族の会奈良県支部」の協力のもと行っている介護教室の第4回目は、制度や社会資源について。講師に奈良市認知症地域支援推進員の三原由紀さんを迎えて開催された講座の内容を紹介します。

 

社会とつながりを持ち資源をうまく利用して

 認知症は誰もがなる可能性があります。2023年には認知症基本法が成立、世の中全体で認知症について取り組んでいこうという流れが進んでいます。
 社会資源とは「生活するうえで起こるさまざまな問題の解決を担う福祉制度や施設のこと」。適切な社会資源をうまく利用することが大切です。

 

 

社会資源の種類

①公的な制度化された仕組みでの援助
 介護保険、医療保険制度に基づいた援助。ホームヘルパーや訪問看護、訪問診療、ケアマネージャーや地域包括支援センター等の専門職による相談や支援、権利擁護事業、成年後見制度等があります。ほかに、民生委員や警察署、消防署などの公的機関があります。

 

②私的な人間関係での援助
 地域のボランティア活動や親類・近所の人、友人など。認知症サポーターやSOSネットワーク、家族の会、電話相談などもあります。
 誰かとつながっておくことが大切です。新しいつながりも作っておきましょう。

 

③本人自身の力の活力
 本人の得意とすることで住み慣れた地域で暮らし続けられることが理想です。

 

 

まずは地域包括支援センターとつながりを

 認知症の人への支援として、家族の介護負担の軽減が求められますが、初期の人には不安への対応が重要となります。家族も、認知症がどう進行していくのか、どう対応すればよいのか分からず不安な状態です。
 誰かに話すことで次につながるので、話すこと、情報を得ること、相談することが大切です。
 認知症について相談する最初の入り口となるのが地域包括支援センターです。どの自治体にもあり、どんな相談でも断られることはなく、次の相談窓口につなげてもらえる場所です。早めにつながりを作っておきましょう。介護される人とする人の暮らす自治体が違う場合、相談はどちらの自治体の地域包括支援センターでも構いませんが、介護のサービスを受けるためには、介護を受ける人が住んでいる自治体の地域包括支援センターに相談する必要があります。

 

 

受診はかかりつけ医から紹介状を

 次に病院への受診となりますが、まずはかかりつけ医に相談して、専門の医療機関に紹介状を書いてもらうことが最善です。紹介状がないと初診料も掛かる上、一からの検査となります。
 また、受診には普段の体の状態を知っている人が一緒に行くことが重要です。以前とどう変わったのか、なぜ認知症と思うのかを伝え、正しい診断につなげましょう。

 

 

活用できる制度や支援があること知って

 認知症の家族が困ることとしては、仕事と介護の両立や介護費用、症状への対応、家族自身の体調不良や介護負担などがあります(「認知症の人と家族の会」資料より)。少しずつ制度もできているので利用しましょう。
 施設など、今すぐ必要となる前に、家族の方も見学に行くことを勧めています。建物の中を見て、家族が気に入ることが大切。雰囲気や明るさ、におい、清潔感や職員・入所者の表情を見ると参考になります。

 

 

活用できる制度・支援

●医療・介護にかかる費用面
・高額療養費制度
・高額介護サービス費制度
・高額介護合算療養費制度

 

●就労への支援
・傷病手当金
・就労支援
・介護休業制度(※家族に対する支援)

 

●税金の減免
・障害者控除
・医療費控除

 

●権利擁護事業・成年後見制度(判断の能力が十分でなくなった人が不利益を被らないよう財産や生活を守るためのサポートをする制度)
・法定後見制度
※判断能力が十分でない場合家庭裁判所で決められます
・任意後見制度
※事前に申請が必要です
・日常生活自立支援事業
※後見をつけるほどではないが心配な場合に利用します

 

●障害福祉
・精神障害者保健福祉手帳
・障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金・障害手当金)
※仕事をしている間に手続きが必要です
・自立支援医療

 

●介護保険制度

 

●さまざまな支援・資源
・生命保険高度障害認定
・住宅ローンの免除
・認知症保険
・資産運用・資産管理の支援
など

 

 

介護保険サービス(日常生活の支援)

●ケアマネージャーによる支援
・状況を把握する
・日々の暮らしや利用したいサービスの希望を整理しケアプランを作成する
・ケアプランが適切か定期的に評価し、再作成・修正を行う

 

●泊まる・暮らすサービス
・ショートステイ
・老人保健施設
・特別養護老人ホーム
・介護医療院
・グループホーム
・有料老人ホーム
など

 

●通うサービス
・デイサービス
・デイケア
・(看護)小規模多機能型居宅介護

 

●自宅で利用できるサービス
・訪問介護
・訪問看護
・定期巡随時対応型訪問看護介護
・訪問リハビリテーション
・訪問入浴
・居宅療養管理指導
・住宅改修
・福祉用具(レンタル・購入)

 

 訪問看護は施設を利用する入り口としても利用が増えています。

 

 

介護保険サービスの種類

 介護保険サービスには在宅での利用から施設の利用まで、居住する自治体でしか利用できない地域密着型サービスと、居住地に関係なく広域利用できる一般的なサービスがあります。

 

●地域密着型サービス(居住する自治体でしか利用できない)
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・小規模な特養・有料老人ホームなど
・小規模機能型居宅介護
・看護小規模機能型居宅介護

 

●広域利用できる一般的なサービス(居住地に関係なく利用できる)
・訪問系サービス:訪問介護・訪問入浴・訪問リハ・居宅療養管理指導
・通所系サービス:通所介護・通所リハ
・短期滞在型サービス
・居住系サービス:有料ホーム・ケアハウス
・入所系サービス:特養・老健・療養型
 
 細かい制度は自治体によっても異なります。

 

 

地域にもさまざまな資源がある

 老人クラブや地域サロン、体操教室、老人福祉センターや公民館、介護予防教室、民生委員、児童委員、地区社会福祉協議会など、人とつながりを持てる場所はいろいろあります。
 自治体では地域生活のガイドブックである認知症ケアパスもできており、認知症の早期診断、早期対応を目指す認知症初期集中支援チームのシステム作りも進められています。
 認知症で行方不明になる人は中期の人より初期の人の方が多いといい、事前登録が必要ですが見守りネットワークも初期のうちに対処することが求められます。GPS機能のある携帯電話などには、家族と分かる連絡先を登録しておきましょう。
 家族の会や、認知症カフェ(オレンジカフェ)も各地で開かれています。
 「『何らかの支援や制度がある』ということを知っておいてほしい」と三原さん。一歩踏み出して、どこかとつながりを作っておき、話をすること。つながりを続けることが大切だと話します。

 

【メモ】
「家族のための奈良認知症介護教室」は奈良県地域包括ケア推進室主催で開催。毎年9月から2月までの全6回。運営・問い合わせは「認知症の人と家族の会奈良県支部」tel0742・41・1026

※このページの内容は2024年1月19日現在のものです。

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