スニーカーにはきかえて

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脳天大神 (吉野町吉野山)

緑に囲まれた谷の奥深く

世界遺産に登録された地、吉野の金峯山寺蔵王堂を訪れた人も多いはず。しかし、その横から続く階段で、脳天大神を参る人は少ないのではないだろうか。

蔵王堂向かって左側に、下に降りる階段があり、上からは妙法殿を見下ろせる。その妙法殿から、455もの段数を下らねばならない。しかし、周囲の緑や、かすかに聞こえるせせらぎに心が落ち着き、途中で思わず立ち尽くすこともしばしば。

「脳天大神」とインパクトのある名前だが、正式には「龍王院」といい、金峯山寺の塔頭の1つであり、金剛蔵王大権現の変化身をご神体としている。終 戦後、金峯山寺管長であった覚澄大僧正の前に、頭を割られるような苦しみにあっている衆生をも救済しようと、頭を割られた大蛇の姿(本来は男神像)で現れ たため、いつとはなしに脳天大神と呼ばれたのだろうか。

ここを訪れるのは2度目だが、最初のときはお百度参りをしている男女が、何事かを唱えながら、一心に往復していた。そういった人が多くやってくるのか、千羽鶴や御札が埋め尽くされるように並び、祈る人の多さがうかがい知れた。

夢のなかで声がした

この日、神戸の東灘市からお参りにきた淡野初子さん(77)は、杖をつきながら階段を降りてきた。なぜここに来たのか尋ねると、「脳天さんに助けら れたから」と話す。詳しく聞くと、商売を続けるのがしんどいと思っていた時期に、電車のなかで脳天さんの杖を持った女性が、お参りのあとに足の具合が良く なったとのこと。それならば1度お参りに、と来たその日の夜に夢を見たそうだ。夢のなかで「もうやめなさい」と声がし、それを機に商売をやめると、途端に 気持ちも、身体も楽になったとのこと。

祈りは、人それぞれにどこかへ届くのだろうか。帰りの階段も、そんな事を考えながら上ってみた。蔵王堂からは下界のようにも思われたが、帰りは天上 から人間界に帰るような気分で、なんとも不思議な感じがした。もちろん翌日は筋肉痛で、「現実は、こういった意味で現れるのか」と、少しは悟りの境地に達 しただろうか?(康)

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急な階段が続く。手すりもあるが、
ゆっくりでなければ、かなりしんどい

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この地は、その昔「暗り谷」
「地獄谷」とも呼ばれていたそうだ

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淡野さん。脳天さんの杖をつきながら
一生懸命降りてきた

地図

脳天大神

吉野町吉野山