国史跡頭塔(奈良市) 謎が深まる七段の塔
奈良市高畑町の住宅街の中に突如現れる不思議な塔。名前も気になり、一度訪れたいと思っていた。
東大寺からまっすぐ南へ延びるバス通りから少し西に折れる。春と秋の特別公開の期間を除くと普段は施錠されていて、現地管理人の仲村表具店に前日までに予約すると見学できる。
協力金300円を支払って資料をもらい、扉を開けてもらう。石段を上る途中にもロープで道がふさがれていたが、管理人の仲村さんによると「どこからか鹿が入って来るんです」。入り口のお地蔵様に花をお供えしても食べられるそうだ。
資料によると、奈良時代の僧玄昉の頭を埋めた墓という伝説があり名前の由来とされていたが、実際は土塔(どとう)がなまって頭塔(ずとう)と呼ばれるようになったと思われるとのこと。767年に東大寺の僧実忠が土塔を築いたという記録があり、五重塔と同じように仏舎利を収める仏塔の役割をしていたという。
石段を上るとこんもりとした木の茂みがあり、一周できるようになっている。右側に進むと、まるでピラミッドのような史跡の東側の面が現れた。写真で見てはいたものの、住宅街の中のこの風景には驚きを感じる。
頭塔は方形七段の塔で、1・3・5・7と奇数の段に11基ずつ、合計44基の石仏が配置されていたと考えられているとのこと。今はすべてを見ることはできないが、28基が確認されているそうだ。一段目の石仏は整備された見学通路からも近く、はっきり見ることができる。各石仏には瓦屋根があるが、これは風雨などから石仏を守るため復元の際に作られたものらしい。
時計と反対回りに史跡の北側へと進む。北側には見学用のデッキもあるが、すぐ近くに民家があるのも面白い。そのまま西側に進むと、目の前に生駒山を望み、大和盆地が広がる景色が目に入った。ここから西は坂になっているようだ。
1300年の昔も、ここからは奈良の都を見下ろせたであろう。東大寺からちょうど南に位置するこの遺跡はどんな思いで造られたのか―。この不思議な風景は現代人に謎を投げかけているようだ。(久)
アクセスマップ
国史跡頭塔
奈良市高畑町921番地(市内循環バス「破石町」西すぐ)。
現地管理人TEL:0742・26・3171(仲村表具店)
※このページの内容は2021年6月4日現在のものです。