蜘蛛塚・蜘蛛窟(御所市) 天孫降臨神話の里 御所の不思議スポット
葛城山と金剛山の麓は天孫降臨神話の里であり、不思議な史跡が多く残るエリアである。気候の良い季節には「葛城の道」としてハイキングに訪れる人も多いという。この地で「土蜘蛛」に関する伝説があると聞き訪れた。
「土蜘蛛」は記紀にも登場し、上古の時代にヤマト王権に従わなかった存在とされている。朝廷からさげすまれ、同時に恐れられてもいたのだろう。
まず向かったのは天孫降臨神話の残る高天原にある高天彦神社。平地では既に溶けている数日前に降った雪が、より神秘的な雰囲気を醸し出している。参道の両脇には樹齢数百年と言われる杉が並んでいる。
御所市企画政策課地域活性推進室の宮橋秀之さんによると、この十数本の木の中に1本だけヒノキが混じっているらしい。植えた人の遊び心か、間違えたのか、何らかの意図があったのかは分からないそうだ。木の幹ではまったく違いは分からない。葉を見れば分かるかもしれないと聞いていたが、植物に詳しくない私には見分けはつかなかった。
参道を抜け本殿へ。御祭神は高皇産霊神(たかみむすひのかみ)で、万物の育成・生育の神とされるという。凍った階段に気を付けながらお参りを済ませた。その本殿の左側に、一つ目の蜘蛛塚はある。祠の後ろにあるため最初は気付かなかった。雪をかぶっているが、お供えもされている。
次に向かったのが、この高天彦神社の東50mほどの場所にあるという蜘蛛窟。案内板はあったが、どう見てもあぜ道を指している。途中まで進んだが、雪が残っていたこともあり断念。ある情報から、隣にある高天山草園の敷地からも行けると知り、入園料300円を入れて山草園に入った。敷地内には管理をしている森村家の墓や、主人が作ったというチェーンソーアートが展示。訪ねたのが冬だったため花は見ることができなかったが、春にはエビネランなど多くの花が咲くという。
園内を歩き周ったがなかなか見つからず、諦めそうになったところでようやく蜘蛛窟の碑を見つけた。
近くの木には「蜘蛛塚の由来について」という案内が張られていた。「此の塚は長臑族(ながすねぞく)の栖『住家』にして、昔は南側に出入口ありとの伝承あり」と書かれている。長臑族とは「私たちの先祖が此地方に渡来してくる以前より此地方に先住していた人たち」で「土蜘蛛」と同じ意味とのこと。高天山草園の管理をしている森村氏が、代々管理してきたという。後日森村さんに聞くと、なかなかたどり着くのは難しいが、たまに歴史好きの人が訪れるそうだ。
もう一か所の蜘蛛塚は、葛城一言主神社の境内にある。
この神社には雄略天皇と一言主大神と出会ったという話も伝わる。一昨年には雄略天皇の銅像も建立されている。天皇の銅像が建てられるのは全国的にも珍しいとのことだ。
高天原から大和盆地を見下ろすと、ここに神がいたと考える古代の人々の気持ちも分かる気がする。しかし同時に、朝廷に従わないものの伝説も「土蜘蛛」として残っている。まだまだ歴史の謎が多い面白い地域である。今度は気候の良い時期に、葛城の道を訪れたいと思った。(久)
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蜘蛛塚・蜘蛛窟
※このページの内容は2023年3月3日現在のものです。