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教えてドクター 夜間頻尿を考える

 排尿の悩みは、なかなか人に相談しにくいもの。そんな中、泌尿器科への相談で多いのが夜間頻尿についてとのことです。平尾病院の百瀬均名誉院長に、夜間頻尿について聞きました。

 

平尾病院・百瀬均名誉院長

 

夜間頻尿自体が病気ではない

 夜中に何回もトイレに起きることが夜間頻尿と思われていますが、医学的には「夜間(睡眠中)に排尿のために1回以上起きなければならないという愁訴(しゅうそ)」と定義されています。辛いと感じれば治療対象ですが、夜間に排尿のため起きること自体が病気ではありません。年を重ねるとトイレが近くなるのは自然現象ともいえ、過剰に心配する必要はありません。
 しかし、夜間に何度も起きると睡眠不足で翌日の日常生活に支障を来すこともあり、また夜間に歩いてトイレに行くことで転倒して骨折するなどの危険性もあります。さらに、夜間頻尿の原因として心臓や呼吸器に重篤な疾患が隠れていることもあります。
 そのため、本人が苦痛に感じていたり、日常生活に支障が生じている場合は医療機関を受診した方が良いでしょう。

 

 

夜間頻尿の原因は3種類

 睡眠中の排尿の仕組みとしては、まず腎臓で尿が作られます(尿産生工場)。尿が膀胱(尿貯留タンク)にたまり満杯になると、強い尿意の信号(アラーム)が脳まで伝わり、その刺激で目覚めてトイレに行きます。
 この尿産生工場、尿貯留タンク、アラームのいずれかに問題があれば夜間の排尿回数は増えます。また原因は1つではない場合もあります。
 夜間頻尿の原因として一番多いのは、尿産生工場の異常です。寝ている間に作られる尿の量が通常の人より多い状態で、この異常も1日24時間の総尿量が増えている場合と、夜間に作られる尿量が特に増えている場合の2種類に分かれます。前者は多くの場合水分の摂り過ぎが考えられますが、後者が非常に多く、夜間多尿と呼びます。
 原因としては、年齢のため尿量を調整しているホルモンバランスが崩れていたり、加齢のために昼間は水分が足の筋肉の間にたまって足がむくんだ状態になっており、夜寝た時に尿として出てくることがあります。
 また心臓や肺、腎臓に何らかの疾患が隠れていることもあります。
 夜の尿量は増えていないのに、夜にトイレに置きてしまう場合は膀胱(タンク)の異常で、膀胱の大きさが小さくなり過敏になる過活動膀胱などが考えられます。ただ、この場合は夜だけ過敏になることは少なく昼間も症状が強くなるため、夜間にのみ頻尿が起こる場合は、この可能性は低くなります。
 もう一つのアラームの異常は、尿意がないのに夜間に目が覚めてしまう状態のことです。夜に目が覚めると、多くの人はトイレに行こうとする習性があります。そのため「排尿のために目が覚めた」と思ってしまいますが、実際は睡眠が浅く、睡眠に障害があるということです。

 

 

治療はまず排尿記録をつけて解析

 夜間の頻尿に困って泌尿器科を受診された場合、排尿記録をつけてもらいます。何時に、何mlの尿が出たかを24時間3日間、可能であれば食事時間、お茶、コーヒーやアルコールを摂取した時間や量も記載するとなお良いです。その結果を解析すれば、先ほどの3つの原因のどれに相当するかが分かります。
 高齢者の場合、夜間の尿量が1日の総尿量の33%を超えると夜間多尿とみなされます。実際に50%を超える患者さんも珍しくありません。
 昼間も夜間も排尿の回数が多く、1回の量が少ない場合は、膀胱や前立腺など泌尿器科系の病気が疑われるので、必要な検査を行った上で薬での治療や、場合によっては手術を行います。
 昼間は問題ないのに夜間の排尿回数が多く、1回の排尿量が少ない場合は、睡眠障害が関係している可能性が疑われます。まずは、生活習慣を整え、それでも効果がない場合は睡眠障害に対する薬物療法を試みることになります。また、最近注目されている睡眠時無呼吸症候群は睡眠障害を来すだけでなく、夜間多尿にも関係していると言われているので注意が必要です。

 

 

まずは行動療法や運動療法で

 夜間頻尿の最も多い原因である夜間多尿の治療では、まず生活習慣を整える行動療法が行われます。
 最も基本的なことは水分を摂り過ぎていないかの確認です。脱水による脳梗塞の発症を予防するために、水分摂取が推奨される傾向にありますが、「摂り過ぎている」人が少なくありません。同じ水分でもお茶やコーヒー、アルコールには利尿作用があるため、習慣的に飲んでいる人にはカフェインレスにするなど是正を促します。特に夜間尿量を減らすためには、夕方以降の飲水量に気を付けることが重要です。
 同時に、運動療法も推奨します。足の筋肉を使うために散歩を夕方にすることがおすすめです。散歩が難しい場合は、家の中ででもテレビを見ながら足を上げておくなど、足を動かす習慣をつけましょう。弾性ストッキングを使うなどの工夫もすすめています。また、午後に足を上げた状態での30分程度の昼寝も、夜間頻尿に有効といわれています。

 

 

症状が改善しない場合は専門の医師に相談を

 もともと心臓や肺に疾患がある人が、急に足のむくみがひどくなった場合は、機能が下がっている可能性があるため、早急に主治医に相談してください。
 睡眠障害の治療でも、まずは生活習慣を整えることが大切です。朝に起きて太陽の光を浴びることで、夜になると睡眠を誘導するホルモンが分泌されるといわれています。入浴は寝る直前でなく布団に入る1~2時間前にすると、適度に身体も温まり睡眠が誘導されます。また水圧で足のむくみもとれやすくなります。
 生活習慣や睡眠環境も整え、それでも眠れない場合は専門の医師に相談してください。
 最近、夜間多尿が原因の夜間頻尿に対する薬が開発されました。医師の元で検査を受け、指示通りに使用すれば良い効果も得られますが、どの患者さんに対しても処方できる薬ではありません。しっかり診察を受けての正しい服用が重要です。
 また、排尿記録を調べると、寝る前にトイレに行く習慣のない人がいることがわかりました。まずは基本として、寝る前の排尿や、生活習慣を整えるところから始めましょう。

 

★平尾病院では、排尿に関する悩みに答える電話無料相談を行っています。気軽にご相談ください。

【日時】毎月第1木曜日の11時~15時
TEL 0744・24・4789
※病院の電話番号とは異なります。詳しくは病院ホームページをご覧ください。
http://www.hiraohos.or.jp

 

協力・平尾病院
橿原市兵部町6―28

 

※このページの内容は2024年3月1日現在のものです。

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